どこかの国に迷いこんでしまったかのような感覚を覚えた。
根岸競馬場跡。その威容に圧倒された。朽ちゆく様がまた美しい。
失われてしまう時が近くないことを祈らずにはいられない。
古いものをいとも簡単に破壊し、やみくもに新しいものを作りたがる
この国の感覚がどうしても理解できない。
なぜ日本人はそのことにもっとためらいを持たないのだろう。
価値ある建物が姿を消し、どうでもいいものがその跡に建つ。
その繰り返しを嫌というほど見てきた。
そんな中で東京駅が元の姿に復元されたのは本当に良かった。
既存の躯体や素材を活かしつつ、古い技術に現代の技術を融合させ、
基礎部分の免震補強までされている。その気になればできるのだ。
新築した歌舞伎座も先代の様式を踏襲した建て替えだった。
こちらも使える木材等は再利用、そして様々な地震対策もなされた。
背面のタワーは気になるが、金銭面を考えると致し方ないのだろう。
東京駅の工事は空中権とやらを売り莫大な工事費を捻出している。
近未来的なスタジアムに1〜2千億円も投じるくらいなら
こういった工事が何箇所もできるのになと思ってしまうのだけど、
大半の人は古いものより新しいものが好きみたいだから仕方がない。
けど本当はこんな観覧席で何かを観れたとしたらとっても嬉しい。