<< 「孤 島」 | main | 「復 興」 >>

美しく暮らしたい

すべてを自らの手で作る暮らし

できることから

ひとつひとつ

「貞 観」
 
tohoku_1.jpg



水墨画のような風景。

優れた景観を有する三陸の海は、
古来豊かな恵みをもたらしてきた。

だが千年に一度、その海は姿を豹変させる。
隠れた牙を剥き出しにし、人に大地に襲いかかる。


その昔、大きな天災がこの地を襲った。
遡ること千年。後に平安の貞観地震と呼ばれる大地震。
そしてこの地は大津波に見舞われた。

古い歴史書にその記述が残る。

「貞観11年5月26日、陸奥国で大地震があった。
 人々は叫び、倒れ、立つことも出来なかった。
 ある者は圧死し、ある者は地に埋もれた。
 牛馬は暴れ、建物の倒壊は数知れず。
 海は吠え、雷のようであった。
 巨大な津波が湧き上がり、たちまち城下にまで至った。
 内陸部までもが果てしなく大海原となり、
 原野も道もわからなくなった。船で逃げる事も、
 山に逃げる事も叶わず、死者は千人に上った。
 人の田畑も財産も何一つ残らなかった。」

 (現代語訳 意訳、省略あり)


まさに平成の東日本大震災そのものである。
牛馬は車に、城は空港にでも置き換えられようか。
死者千人というのも、当時の日本の人口を考慮すると
二万人規模とも考えられるらしい。

千年に一度、牙を剥き出し姿を変える三陸の海。
人々は畏れおののき海から離れ、
その恐怖は孫の代まで語り継がれたことであろう。
だが月日が流れ、いつしかそれは古い言い伝えとなり、
さらには迷信のようなものへとなっていった。
大地に残された傷痕も、跡形も無く消え去った。
やがて人々は再び海に集まり、暮らし、
安らかな心でこの海を眺めたことであろう。
豊かで美しいこの海を。


明け方の漁港を一人で歩いた。
現実のものでないような静けさの中で、
千年前のこの海を、そして千年後のこの海のことを
しばし想った。

今なお遺体が上がるこの海を眺めながら。





東 北 12:10 -
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>
about
categories
archives
links